棚卸資産とは?勘定科目と仕訳、棚卸し差の仕訳について解説
「棚卸資産はどうやって計上すればいいの?」
「棚卸資産に含まれるものと含まれないものって何が違うの?」
棚卸資産の仕訳をこれからするにあたって、これらの疑問をお持ちではないでしょうか?この記事では、棚卸資産の仕訳についての基本的な部分をお伝えし、仕訳の重要性やコツなどをお伝えしていきますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
棚卸資産とは?
棚卸資産とは、販売目的で仕入れたもので、決算の際に所有している資産のことです。
業種によって棚卸資産に該当する対象が異なる場合もあります。例えば、土地や建物は棚卸資産ではなく固定資産に該当しますが、不動産会社の場合はそれらも棚卸資産になります。
棚卸資産の具体例
法人税法施行令第十条によると、以下のものが棚卸資産として扱います。
・商品または製品:販売目的で仕入れた商品や製造した製品
・半製品:製造され、販売可能な状態の製品
・仕掛品:単独で販売・貯蔵できないもの
・主要原材料:製品を製造するのに必要な主要材料
・補助原材料:製品製造の際に補助的に使う材料
・消耗品:通常は該当しないが、収入印紙など金銭同等の価値が認められるもの
商品や製品だけでなく、原材料や消耗品の一部も棚卸資産となるので、注意しましょう。
棚卸資産の勘定科目一覧は?
「棚卸資産」は、勘定科目として使用しません。先ほどお伝えした、「商品」や「原材料」などを勘定科目として記載します。
小売業の場合は「商品」を主に使われますし、製造業の場合は「製品」や「仕掛品」、「原材料」などがよく使われます。
棚卸資産の3つの仕訳
棚卸資産の仕訳は時期ごとに行います。仕訳例として、以下の3つを紹介します。
・期首の棚卸資産
・期中の棚卸資産
・期末の棚卸資産
それぞれについて具体的に解説していきます。
期首の棚卸資産
期首の棚卸資産は、これから利益になる予定の資産です。前期末の棚卸資産と同じ額となります。前期末の棚卸資産が200万円であれば、今期首も200万円となります。
棚卸資産は、現金化されていない商品などのことを指しますが、扱いとしては現金と同じ資産と同様になります。現金化不能な不良品や経年劣化により販売不能なものは棚卸資産に含みません。
期中の棚卸資産
期中の棚卸資産の仕訳は、主に仕入れの際に行います。
記載方法は、以下のようになります。
借方:仕入れ価格
貸方:買掛金の金額
注意点は、仕入れの際にかかったコストも記載することです。
例えば、50万円の仕入れに対して1万円の送料がかかった場合、以下のように記します。
借方:仕入 510,000円
貸方:仕入 510,000円
期末の棚卸資産
三分法を適用する場合、期中には商品勘定をさわらないので、期首の商品棚卸高が残っています。
期末商品棚卸高を商品勘定に反映させるには、次のように仕訳します。
期首商品棚卸高が35万円、期末商品棚卸高が50万円だった場合。
借方:仕入 350,000円 / 繰越商品 500,000円
貸方:繰越商品 500,000円 / 仕入 350,000円
棚卸資産の評価方法
棚卸資産の評価方法は、原価法と低価法の2種類です。どのような評価方法なのか、具体的に解説していきます。
原価法
商品の取得額で評価するのが原価法です。
原価法は、以下の6つの評価方法に分かれます。
・個別法
・先入先出法
・総平均法
・移動平均法
・売価還元法
・最終仕入原価法
それぞれについて、解説します。
・個別法
個別法は、正確に在庫評価額を表せる評価方法です。仕入れた商品の原価を個別に評価するので、売上と原価が一致します。販売数に伴って多くの労力を必要とするので、販売数が少ない商品を評価する際におすすめです。
・先入先出法
先入先出法は、在庫の仕入額として直近の仕入額を計上する評価方法です。食品業界でよく使われます。「First in, First Out」と英語で表記されるので、FIFOとも言われます。
・総平均法
総平均法とは、月間平均仕入額や、年間平均仕入額を元に評価する方法です。
・移動平均法
移動平均法とは、仕入れによって棚卸資産が変わるたびに平均仕入額を算出する評価方法です。
・売価還元法
売価還元法とは、商品の仕入額を評価するのではなく、販売額に原価率をかけて取得原価を評価する方法です。
なお、棚卸資産の評価方法については税務署への届出が必要です。
もし届出を提出しない場合、最終仕入れ原価法で評価しなければいけません。最終仕入れ原価法は、商品の価格変動が大きかった場合、実際にかかった金額との誤差が生じてしまうのがデメリットです。それ以外の評価方法を行う場合は、確定申告の提出期限までに所轄の税務署に届出を提出しましょう。
低価法
低価法とは、在庫の価値が時間と共に減ってしまう時の評価方法です。評価方法は、原価法の評価額と期末時点の時価の低い方で評価します。
棚卸し差が生じた場合
もし、販売できない不良在庫があれば、不良在庫の分は棚卸資産として計上できません。その場合は、棚卸資産評価損として計上しましょう。
例えば、不良在庫が5万円分あったとすると、以下のように仕訳します。
借方:棚卸資産評価損 50,000円
貸方:棚卸資産 50,000円
不良在庫が発生した原因や、それに対する見直し方法が分かっているのであれば、それらもあわせて記載しておきましょう。
棚卸資産の仕訳のコツ
棚卸資産の仕訳は、企業の資産管理をする上でとても重要です。正確に在庫管理を行うことで、企業の健全性の指標の1つとできるからです。ここでは、棚卸資産を仕訳するためのコツを以下の2つお伝えします。
・仕訳は定期的に行う
・在庫数によるリスクを把握する
それぞれについて詳しく解説してきます。
仕分けは定期的に行う
棚卸資産の仕訳は定期的に行うべきです。もし、期末にのみ仕訳をしていると、期首に生じたミスのことを忘れてしまい、数字がズレていても何が原因だったかがわからなくなってしまうことがあるからです。可能であれば、月に1度は仕訳を行うといいでしょう。
もしズレが生じたとしても、1ヶ月間に起こったことを遡るのは比較的容易です。定期的に仕訳を行うのは面倒と感じるかもしれませんが、結果的に労力が少なくて済むことも多々あります。
どうしても仕訳業務が後回しになってしまうという人は、仕訳業務を行う日をあらかじめ決めておき、仕訳のためのスケジュールを空けておくのをおすすめします。
在庫数によるリスクを把握する
棚卸資産の仕訳をする前に、まずは在庫数によるリスクをしっかりと把握しておきましょう。在庫をかかえると、経年劣化や過失等によって不良在庫となってしまう可能性があります。また、少なすぎると、すぐに在庫切れになってしまい、本来売れるはずであった商品が売れなくなってしまうこともあります。
これらの在庫リスクを把握した上で、棚卸資産の仕訳を行い、適切に在庫を管理しましょう。
まとめ
この記事では、棚卸資産の勘定科目の一覧や仕訳例、具体的な評価方法や仕訳のコツなどについてお伝えしてきました。
棚卸資産の基本的な知識や、在庫リスクなどを把握した上で、こまめに仕訳を行うことで、適切な在庫管理が実現できます。在庫管理ミスは売上損失にも繋がるので、きっちりと押さえておきましょう。
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