リテンションマネジメントとは?導入するメリットや成功事例・強化させるポイントについても解説!
終身雇用制度が崩壊しつつある日本では、人材の流動化が急速に進み、転職するのが当たり前になってきました。そのため、1人でも多くの人材を定着させるために「リテンションマネジメント」を導入する企業が増えてきています。
しかし、リテンションマネジメントについて詳しく知らない担当者も多いはずです。そこで本記事では、リテンションマネジメントの基本知識や導入するメリット・実際の成功事例などについて解説します。
目次
リテンションマネジメントとは
リテンションマネジメントとは、保有・維持の意味を持つ「リテンション(retention)」に、人事管理の意味を持つ「マネジメント(manegement)」を組み合わせた言葉であり、「企業と人材との関係の維持(定着)」を意味する言葉として用いられます。
優秀な人材の離職を防ぎ、なるべく長く自社で働いてもらえるように環境などを整えるための様々な施策を指しており、最近ではリテンションマネジメントに取り組む企業が増えてきました。
それは一体何故でしょうか。次章で詳しく解説します。
リテンションマネジメントが注目を受ける背景
リテンションマネジメントが注目されている背景として挙げられるのが、労働人口の減少と離職率の高さです。現代の日本では、少子高齢化に伴い労働人口が年々減少傾向にあります。
総務省統計局「労働力調査(基本集計)2021年」によると、労働力人口は前年に比べ、8万人の減少(2年連続の減少)。15〜64歳の労働力人口で見ると、前年に比べ 15 万人の減少となっています。今後も減少傾向は継続すると予想されるため、慢性的な人手不足によって人材の確保が困難となっています。
また、厚生労働省の調査結果によると、就職後3年以内の離職率は3割にも上ることが判明しました。原因の1つとして考えられるのは、労働人口の減少によって終身雇用制度が崩壊しつつあるという現状です。
人材の流動化が進む昨今において、IT通信業界をはじめとする様々な業種で採用拡大の動きを見せています。優秀な人材の争奪戦ともいえる転職市場の動きが活発化していることからも、転職によるスキルアップを希望する人材も増加傾向にあるのです。
これらの影響をふまえ、企業はリテンションマネジメントを取り入れることで、従業員の定着率向上を図っています。
人材が離職する主な理由とは
リテンションマネジメントを取り入れるには、「自社の人材が離職してしまう理由」をまず始めに把握しておかなければなりません。
ここでは、「人材が離職する主な理由」のアンケート調査結果をご紹介いたします。
株式会社ビズヒッツでは、新卒1年目で転職した人を対象に「離職した主な理由」をアンケート調査したところ、以下の内容となりました。
1位 人間関係
2位 長時間労働・休日への不満
3位 仕事内容が合わない
人間関係などは入社してからではないと判断するのが難しいかもしれません。しかし、3位の仕事内容が合わないという理由に関しては、入社前の採用段階で求職者と企業の間で意思疎通が上手くできず、ミスマッチが起こっている可能性があります。
また、マイナビ転職による「新卒入社した会社員」を対象としたアンケートでは、3年以内に退職予定の割合は28.3%、10年以内は51.0%という結果になりました。
「キャリアアップしたい」、「様々な会社で経験を積みたい」が主な要因として挙げられています。つまり、企業が特に対策を行わない場合には、ベテラン社員や役職者が育つ前に約半数の人材が会社を辞めてしまうことになるのです。
リテンションマネジメントを導入するメリット
リテンションマネジメントを導入するメリットは以下の4つです。
・トータルコストの削減
・帰属意識の向上
・企業ブランディングの向上
・生産性の向上
順番に解説します。
トータルコストの削減
新たに従業員を採用するためには、時間と労力がかかります。また、採用してからも現場で活躍してもらうために研修を開催したり、先輩社員に指導してもらったりしなければいけません。従業員1人を雇用するだけでもさまざまなコストがかかるのです。
しかし、リテンションマネジメントを導入することによって離職率が低下するので、採用するためのコストや従業員を育成するためのコストなど、トータルでのコストを抑えることができます。
帰属意識の向上
リテンションマネジメントにおける施策はさまざまあります。最近では、副業を解禁したりテレワークやフレックスタイムのような従業員にとって働きやすい制度を積極的に導入したりする企業も少なくありません。
その結果、従業員満足度が高まり、「この会社で働き続けたい」と思う従業員が増えることで、帰属意識の向上にも期待できるのです。
企業ブランディングの向上
最近では、会社のホームページだけではなく、口コミサイトやSNSなどの評判から企業を選ぶ求職者も増えてきています。そのため、評判が悪かったり離職率がほかの企業と比較して高かったりすると、求職者は不安に感じてしまい、エントリー数の減少にもつながるのです。
リテンションマネジメントを導入することで、離職率が低下し、評価の良い口コミも増えるため、企業ブランディングの向上に期待できます。
生産性の向上
従業員が退職してしまうと、業務を引き継いだり新しく入社する従業員を迎えるための書類を作成したりするなど、次々と業務が発生します。そのため、業務が逼迫してしまい、従業員に負担がかかります。
しかし、リテンションマネジメントを導入することによって離職率が低下し、勤続年数が長いベテランの従業員が増えるので、生産性の向上にもつながるのです。
リテンションを強化させる4つのポイント
リテンションを強化させるためには、以下の4つのポイントを意識しましょう。
・正当な評価と明確な給与体系
・コミュニケーションの活性化
・業務形態の多様化
・キャリアとスキルを向上させるための環境構築
一つずつ解説します。
正当な評価と明確な給与体系
従業員の中には「成果を出しているにも関わらず正当な評価がされない」と感じる人も少なくありません。企業は正当な評価をすることで、従業員のモチベーションが高まり、仕事に対してもポジティブになれます。
また、給与体系についても明確にする必要があります。給与体系を明確にすることで、自分がどれくらい評価されているのかが分かり、従業員にとって一つの指標となるからです。評価や給与体系が一目でわかるような資料などを準備するのがオススメです。
コミュニケーションの活性化
会社は一つの組織です。そのため、従業員同士で活発なコミュニケーションを取ることで、お互いが助け合い、リテンションを強化することができます。
勤務中はどうしても業務的な会話がほとんどなので、社内でサークルを結成したり、定期的な親睦会・社員旅行などを開催するとコミュニケーションが活発になります。先輩・後輩関係なく、誰でも気兼ねなくコミュニケーションが取れるような風通しの良い職場環境を築き上げることが重要です。
※新入社員のコミュニケーション課題とオンボーディング施策についての記事はこちら
▶入社後の離脱を防ぐ!ニューノーマル時代のオンボーディング施策とは
勤務形態の多様化
最近では新型コロナウイルスの影響によって、リモートワークを実施している企業も増えています。また、出産や育児、介護といったライフステージの変化の影響で、フルタイムで勤務することが難しく、会社を退職せざるを得ないという人も少なくありません。
時短勤務やフレックスタイム、フルリモートなど、従業員に合った働き方を実現することで、リテンションの強化にも繋がります。従業員が将来的に働き続けられるイメージを持つことができるかどうかは、1つのポイントとなります。
キャリアとスキルを向上させるための環境構築
キャリアアップのために退職する従業員も少なくありません。そのため、社内でキャリアとスキルを向上させるためのキャリアパスを導入しましょう。キャリアパスとは、従業員がその職務やポジションに就くための道筋のことです。その道筋を明確に示したものをキャリアパス制度と呼びます。
キャリアパス制度を導入することで、従業員は将来的にどのように活躍できるのかがイメージできます。その結果、自分のやるべき目標が明確にみえてモチベーションが向上し、定着率の改善にも期待できるのです。
また、採用活動においてキャリアパス制度を公開をすることで、求職者は自身の希望との比較ができ、採用段階でのミスマッチ防止にもなります。入社後にはキャリアパスに即したスキルアップができるよう、適切なタイミングでの研修や育成カリキュラムなどの環境体制を整えておきましょう。
リテンションマネジメントの成功事例
ここで、実際にリテンションマネジメントを取り入れたことで成功した事例を2つ紹介します。
事例1 コミュニケーションの強化
A社では配属される部署によって年齢にばらつきがあったため、新入社員が入社した時に同年代の同僚がいない部署で定着できるかが課題でした。
そこで、なるべく同年代の同僚がいる部署に配置できるようにし、難しい場合には研修やレクリエーションなどで交流の機会を設けるなどの対応を講じました。
その結果、以前に比べて早期離職者が少なくなったのです。新入社員の人間関係構築が円滑に進むような環境づくりや人事配置を行うことは、リテンションに効果的な対策です。
事例2 評価体制の改善による満足度の向上
B社の評価制度では、上司の評価次第で部下の点数を決めるため、「評価基準が上司に依存し、正当に評価されていないのではないか」と従業員が不信感を募らせていました。
そこで、評価する上司に対して「話すべき内容のマニュアル化」や、どの評価者であっても評価の意義に納得できる体制づくりのための「評価者訓練」を行うことにしました。
その結果、評価者間でのばらつきのない公平な評価を下せるようになり、従業員の満足度も向上したのです。評価が明確化されることで社員のキャリアパスへのモチベーション向上が期待できます。
参考資料:厚生労働省「人材確保に「効く」事例集」
まとめ
本記事では、リテンションマネジメントの基本知識や導入するメリット・実際の成功事例などについて解説しました。
少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、リテンションマネジメントを導入する企業が増えてきています。リテンションマネジメントを導入することで、トータルコストの削減や帰属意識の向上などにも期待できるので、1人でも多くの人材を定着させたいのであれば、本記事を参考に導入を検討してみましょう。
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