「この商品がほしい!」事例に学ぶ、顧客の潜在ニーズを引き出す方法
マーケティングを行う最大の目的は、顧客に製品やサービスを購入いただくこと。そのための方法はいろいろありますが、「なぜ、その製品やサービスが必要なのか」を顧客に理解してもらうのは、最も基本的なことといえるでしょう。しかし、言葉でいうのは簡単ですが、実際にその必要性を実感してもらい、購買につなげるのは簡単なことではありません。
今回は、顧客の潜在的ニーズを引き出すうえで、参考になりそうな事例をご紹介。普段は必要性を感じる機会の少ない「保険」という商品において、その必要性を強く意識させることに成功した秀逸なプロモーションです。
目次
1.火災保険の必要性を効果的にアピール!その方法とは?
今回ご紹介する事例は、大手保険会社として世界的に有名なチューリッヒ社が、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスの路上で展開したプロモーションイベント。とはいえ、一般的に想像されるような、路上にブースを設置して行われるイベントではありません。さらにいえば、このイベントは日中ではなく、人通りの少なくなった夜間に行われたもの。いったいどのようにして、注目を集めることができたのでしょうか。
通行人が騒然!なんと、民家が燃えている!
イベントが行われたのは、オフィスビルや民家が並ぶとある一角。そこにある建物の中から、突然火の手が上がります。まだ外には燃え広がっていないものの、内部は全体が炎に包まれていて、このままでは全焼しそうな勢い。
通行人たちも心配そうに立ち止まり、様子を見守っています。しかし、いつまでたっても消防車が来る気配はなく、それ以上の騒ぎになる様子もありません。
実は、これこそがチューリッヒ社が仕掛けたイベント。炎は実際に燃えていたわけではなく、映像技術を駆使して、火災が起こったように見せかけていたのです。しばらくして、突然火の手が止んだかと思うと室内に明かりがともり、家具が整然と配置された、元通りの部屋の様子が映し出されます。
そして、何が起こったのかわからないといった顔の通行人をよそに、以下のようなテロップが流されたのです。
NOTHING CHANGES IF YOU ARE WELL COVERED.
Zurich Fire Insurance. With inmediate replacement.
―もし保険に入っていれば、なにも変わることはありません。
チューリッヒ火災保険が、ただちに元通りの生活を保障します
2.火災の様子を見て、通行人が思い浮かべたことは…?
いうまでもないことですが、ひとたび火災が起こると多くのものを失ってしまうことになります。これまで大切に作り上げてきた家や財産だけでなく、場合によっては近隣に住む人々への補償をしなければならないことも。元通りの生活に戻るのに何ヶ月もの時間を要することも珍しくありません。
しかしそんな場合でも、火災保険に入っていれば、少なくとも家財や建物など財産面については保証を受けられるため、スムーズに元の生活に戻ることができるようになります。
このプロモーションイベントが目指したのは、まさにこうした「保険の必要性」を人々に実感させることにありました。
燃え上がる建物を目にした人々が真っ先に思い浮かべたのは「もしこれが自分の家だったら……」という思いであったことは想像に難くありません。大切な思い出の品や家財が焼けていく様子に背筋をヒヤリとさせながら、火災保険の必要性を実感していたのではないでしょうか。
実際にこのプロモーションへの反響は大きく、同社のコールセンターには保険に関する問い合わせが殺到したとか。また、具体的な数字は示されていないものの、ポジティブなブランドイメージを構築するうえでも大きな効果をもたらしたとされています。
3.顧客を驚かせるリアリティが、キャンペーン成功のカギに
顧客に製品やサービスを購入いただくための秘訣は、顧客に「これがほしい!」と思ってもらうこと。このシンプルな発想は、さまざまなマーケティング手法が生み出されていく現代においても、変わらずに通用する方法といえるのではないでしょうか。その方法としてプロモーションイベントという形態を選択し、通行人のすぐ目の前で非常事態を演出した点が秀逸なキャンペーンです。
効果的なマーケティング手法を探るすべてのマーケターの皆さんにとって、参考になる部分があるのではないでしょうか。